激増中の日本の民泊

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2018年8月『民泊一覧』

国家戦略特区

2018年6月15日、民泊の新法律が施行されスタートしました。最近ニュースやネットで、時々目にする『民泊(minpaku)』。

今回は『日本の民泊』の概要を紹介したいと思いますが、ここでは法律的な詳しい説明には重点を置かず、現在、日本国内では『違法民泊』が急増している為、違法宿泊施設を利用しないよう、注意できる内容を紹介したいと思います

また、このページの前半部分は、日本国内の問題などに触れていますが、訪日を予定している外国人の方には『注目点その2』以降の内容を、是非見て頂きたいと思います。もちろん、日本人の方で『民泊』を利用する予定のある方にも、見て頂ければと思います。

©まめぶろ

まず『民泊』を知るには『国家戦略特区』について知っておくと、民泊をより詳しく理解する事ができます。

『国家戦略特区』とは、正確には『国家戦略特別区域』と言い、現在日本の内閣総理大臣の『安倍首相』が『世界で一番ビジネスをしやすい環境』を作る事を目的として、自治体ではなく、国家主導でおこなおうと、安倍首相が力強く推進している規制緩和の制度・戦略の1つで、特定の地域を指定し、その規制緩和によって、いわゆる『民泊』の営業をおこない易くしました

この背景には、ビジネスのし易い地域として、ニュージーランドやシンガポールなどが常に上位に居るのに対し、2017年、日本は34位と、上位に入る事が難しい現実があり、国内の整備を急務と考えている事もあります。

この順位は『The World Bank(世界銀行)』が『ビジネス環境ランキング(Economy Rankings)を発表し『仕事のし易さ』や『起業のし易さ』など、10の項目をランキング化し、世界190の国と地域を対象におこなっている順位です。




話しは戻りますが、国家戦略特区は『地域と分野』を限定し、そこに大きな変革をもたらす為の制度で『規制や制度の緩和』あるいは『税制面の優遇』をおこなう『規制改革制度』を実行する為の地域です。規制緩和後の平成26年(2014年)5月に、最初の区域が指定されました。

ここで注目したい言葉『地域』と『分野』です。

1つ目の『地域』は、国がその地域を指定し、段階的に増やしました。まず、最初の特区に選ばれ指定されたのは、下記の地域でした。(表は右に動きます)

事項 地域
国際ビジネス・イノベーションの拠点 東京圏(東京都・神奈川県・千葉県成田市)
医療等イノベーション拠点・およびチャレンジ人材支援の拠点 関西圏(大阪府・京都府・兵庫県)
国際観光の拠点 沖縄県
大規模農業の改革の拠点 新潟県新潟市
中山間地農業の改革の拠点 兵庫県養父市
創業のための雇用改革の拠点 福岡県福岡市

その後、第二次・第三次と続き、拡大しました。

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2つ目の注目の『分野』は『観光・教育・農業』などを含めた『計11分野・86事項になります。数が多いので、ここでは割愛しますが、詳しく知りたい方は、内閣府の『国家戦略特区・規制改革メニュー』をご覧ください。

その『規制改革メニュー』の中でも『民泊』に関わり、注目する部分は下記になります。(表は右に動きます)

規制改革事項 概要
旅館業法 滞在施設の旅館業法の適用除外
国内外旅行客の滞在に適した施設を賃貸借契約に基づき3日から10日間以上使用させ、滞在に必要な役務を提供する事業を行おうとする者が、都道府県知事の認定を受けた場合は、旅館業法を適用しない
旅館業法(宅建法) 旅館業法の特例対象施設における重要事項説明義務がないことの明確化
国家戦略特区における旅館業法の特例の対象となる滞在施設には宅地建物取引業法の適用はなく、滞在者への重要事項説明が不要であることを明確化。
古民家(旅館) 古民家等の歴史的建築物に関する旅館業法の適用除外
地方自治体の条例に基づき選定される歴史的建築物について、施設基準の適用を一部除外し、ビデオカメラが設置され、緊急時の対応の体制が整備されている場合はフロント無しで認める。

内閣府・国家戦略特区ホームページ・特区で措置された規制改革メニューの観光より引用

民泊の営業をおこない易くする為、いくつもの改変がされましたが、この表にある『滞在者への重要説明が不要である』や『ビデオカメラが設置され、緊急時の対応の体制が整備されている場合はフロント無しで認める』などの部分を自己中心的な解釈をした業者などによって、違法民泊が増えたように思います。

民泊について、更に詳しく知りたい方は、下記リンクなども参考になりますので、興味のある方はご覧下さい。

首相官邸・国家戦略特区

政府広報オンライン

観光庁・民泊制度ポータルサイト

内閣府・国家戦略特区プロモーションビデオ




注目される民泊

『民泊』は、良くも悪くも注目が集まっています。下記に後述しますが、1つには『今後の日本に、宿泊施設の不足が予測され、増設が急務な為、新しいビジネスチャンス』としての注目。2つには、その急激な増設に伴い『違法民泊』が急増している事などで、注目を集めています。

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 注目点その1 

現在、日本は国を挙げて訪日外国人の旅行者を増やそうとしています。東京オリンピックが開催される2020年には4,000万人、さらに2030年には6,000万人の訪日外国人を目指しています。詳しくは観光庁の『訪日外国人旅行者の受入環境整備』に書いてあるので、興味のある方は読んでみて下さい。

その効果が現れ始め、訪日外国人の方が、今急激に日本に増えています。外国人の方が日本に来て、実際に日本の良い部分などを感じ、知ってもらうのは、とても嬉しい事です。

しかし、人数の増加と共に、いくつかの問題も出てきました。民泊で借りた部屋の『又貸し』や『夜間の騒音』や『室内の衛生面』または『ゴミの分別が出来ていない』あるいは、京都などの人気地域では、そこに住んでいる方が、普段おこなう毎日の買い物などにも支障が出る程、生活圏へも人が増えてしまっている事も、大きな問題となり、解決を急がれています。そのいくつかある問題の他にも、今回取り上げている『宿泊施設の不足』があります。

古くから日本には『民宿(minsyuku)』があります。よく見かけるのは、海に近いリゾート地などで、一般民家を宿泊施設として利用するサービスです。日本人なら、利用した事のある方も多いと思います。

訪日外国人の方には『直接日本の生活を体験できる』と、人気が高まっています。これは大きなホテルや旅館でも出来ない部分のサービスです。現在、訪日外国人の方には、一般的なイベントも含め、体験型の内容が好評で、ホームステイと同義に使われる事もあり『民宿』に人気の集まる、大きな理由になっています。

今、日本にある『ホテル・ビジネスホテル・旅館・民宿』などだけでは、今後の訪日外国人の増加に対応しきれないとの予想があります。一部地域などでは『カプセルホテル』や『ラブホテル』などを改装し、安い価格帯で宿泊の場所を提供する動きも出てきています。しかし、それでも宿泊施設の不足を補えるか不安が残る為、更なる宿泊施設の確保が急務となり『民泊』への注目が高まっています。

さらに、日本には別の問題として『空き家』が急激に増加をしています。

これは『家主』が分からず、何年も放置されている『民家』や、『家主』が亡くなり、相続する家族が無く『空き家』になってしまう家があり、全国に増えています。しかし、その空き家を国が再利用するにも、立地が悪かったり、改装して使うにしても、手間や経費、あるいは維持費が大きく、手を付けられない『空き家』が各地に増え続けています。

また、文字だけ見ると、似たように見える問題で、全国に『空きマンション』も急増していますが、この問題は、今回の内容と大きく異なる問題を含んでいるので、ここでは割愛します。

そこで、先に説明をした、規制改革制度の波に乗り、その『空き家』を上手く再利用しようとする動きが、近年活発傾向にあり、これを『ビジネスチャンス』として捉え、民間会社や投資家などが『空き家』に注目をしています。

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 注目点その2 

2つ目の注目点は『違法民泊』が急増している事です。今回の記事を書いた理由は、この内容を広く知ってもらい為、書きました。ここでは『届出番号』と『認可標識 (ステッカー)』について触れたいと思います。これを確認できれば『違法民泊』に泊まらないよう、自己防衛ができます。

 届け出番号 

2018年6月15日、住宅宿泊事業法の施行以降は、日本国内で、いわゆる民泊』の営業をおこなう事業者は、都道府県などの各自治体へ、下記などへの届け出が必要で、これらの方法などから選択する事になっています。(表は右に動きます)

1 旅館業法』(昭和23年法律第138号)の許可を得る。
2 国家戦略特区法(平成25年法律第107号)いわゆる『特区民泊』の認定を得る。
3 住宅宿泊事業法』の届出を行う。

上記の1にある『旅館業法』は4つに区分され『ホテル』・『旅館』・『簡易宿所』・『下宿』があります。これらの認可を得ずに旅館業の運営をする事は違法になります。しかし、上記の2『国家戦略特区』の地域内において『旅館業法』の特例として『旅館業法適用除外』の申請をし、認可を得ると『民泊』をおこなう事が出来るようになりました。これが、いわゆる『特区民泊』です。

これらの『届出番号』は表示してある『旅行サイト』もあるので、確認できると安心に繋がります。また『届出番号』が表示されていなくても、旅行サイト自体が、届出のある『事業者』などだけを表示するサイトもあります。『違法民泊』に宿泊しない為にも、これらの『届出番号』を確認する事が大切です。

しかし、これらの『届出番号』を偽る業者が少なからず存在します。『届出番号』を各自治体などから発行された『本物』の番号かを確認するかは、現時点では各旅行サイトなどの判断に任されています。『届出番号』の正確性について、旅行サイトに、しっかりと確認をしてもらうか、あるいは、旅行者自身で確認するのかは、今後検討する余地がある部分です。

旅行者側からすれば、やはり旅行会社や仲介企業などで、しっかりと『届出番号』の確認をおこなって貰いたいと言うのが心情なので、今後、国側も確認のし易い体制へ、更なる向上に期待です。

これらの許可の届出や認定がおこなわれているかは、下記の方法で確認する事ができます

旅館業法の許可
民泊施設の所在する都道府県で(保健所を設置する市・特別区を含む)確認ができます。許可を得ている物件は、都道府県のHPに掲載されている事もあります。例えば、下記のようなサイトがあります。

東京都新宿区:施設名簿(旅館業)

港区内の旅館業施設一覧表.pdf (日本語のみ)

国家戦略特区法(特区民泊)の認定
認定を受けている特区民泊の物件は、特区民泊に取り組んでいる各自治体への問い合わせや、当該自治体のHPで確認する事ができます。例えば、下記のようなサイトがあります。

大阪市オープンデータポータルサイト:旅館業許可施設一覧及び国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業特定認定施設一覧(特区民泊) 住宅宿泊事業法に基づく届出施設一覧

住宅宿泊事業法の届出
住宅宿泊事業者には、標識の掲示が義務付けられています。これは届出番号の記載された標識』が宿泊施設の玄関付近に表示されているかで確認ができます。下記『認可標識(ステッカー)』の項目を参考にして下さい。




 認可標識 (ステッカー) 

住宅宿泊業者で『届出』がされている施設の玄関付近の見やすい場所に、下にある標識(ステッカー)を表示するように義務付けられています。また類似した表記として『観光庁長官発行の登録番号』や、その『登録年月日』や『登録の有効期限』や『商号、名称又は氏名』が表記されている場合もあります。

©まめぶろ標識『民泊制度ポータルサイト』

民泊の標識は下記のような、各自治体で発行している物もあります。

東京都大田区:特区民泊の標識

大阪府大阪市:適法民泊事業者の判別方法について.pdf

これらの標識は、民泊施設を利用する際に、玄関付近で確認が出来ます。『違法民泊』を利用しない為にも届出番号』や『認可標識』の確認を是非おこなって頂きたいと思います。

©まめぶろ

『違法民泊』では『衛生面が行き届いていない場所』や『プライバシーの確保も十分にされてない場所』や『自分の利用する部屋の鍵を誰でも自由に持って行ける場所での受け渡し』をする施設なども多くあります。

『安い』から、『手続きが簡単』だったから等で『違法民泊だと承知の上で利用した』という旅行者も居るようです。しかしその後、病気になってしまったり、物を盗まれたり、怖い事や不快な事に遭遇する確率は高まります。そうならない為にも『違法民泊』を利用しない方が賢明です

自己防衛・通報・相談先

『違法民泊』を利用しないようにするには、上記に書いたような方法で自己防衛ができます。

1つには

都道府県の自治体が発行している『届出番号』をホームページなどで確認をする。

もう1つは

民泊を利用する宿泊施設の玄関やポスト付近などの見やすい場所に『認可標識』があるか確認をする。

もし『違法民泊』を見つけた時は『保健所』に通報や相談をする事ができます。

『保健所』は指導できる権限を持っているので、通報する際は、施設が特定できるように『住所や詳細な特徴』を伝えると、調査してもらう時に特定し易くなります

民泊について相談できる窓口

民泊制度コールセンター (観光庁:民泊制度ポータルサイト)

全国の保健所一覧

東京都福祉保健局:保健所・保健センター

大阪市:違法民泊に関する相談 (違法民泊通報窓口)

京都市情報館:民泊通報・相談窓口

民泊をおこなっている宿泊施設には、アットホームだったり、素晴らしい施設も数多くあります。旅行をする全ての方が、楽しい思い出が残る事を心より願っています。